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【政策点】事業再構築補助金 審査項目の解釈・ポイント

【政策点】事業再構築補助金の審査項目を認定経営革新等支援機関の中小企業診断士が解説しました。審査項目の解釈やポイントをご覧になれます。このページは政策点①~⑤を掲載しています。

政策点

政策点の「政策」は国が実現したい大きな方向性のことを指していると考えられます。そのため、中小企業にとって壮大に感じられる記述が多いことが特徴です。

事業再構築補助金の審査は事業化点と再構築点が占める割合が大きいと考えられます。※1しかし、事業化点や再構築点では差がつかなかったときに、政策点で採否が分かれる可能性は十分にあります

審査項目を理解して、事業計画が適合し得る箇所は事業計画書に記述する工夫が必要でしょう。


※1 事業再構築補助金ウェブサイトから確認できる動画「事業再構築補助金のご案内~実践編~」のなかで、中小企業庁前経営支援部長より「2.事業化点と3.再構築点がメインで、ここまででほとんど決まる」というコメントがありました。

政策点①

①先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用等を通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。 事業再構築補助金 公募要領(第3回)1.1版

審査項目の解釈・ポイント
  • 先端的なデジタル技術という言葉に明確な定義はありません。経済産業省が推進しているDX(デジタルトランスフォーメーション)に関連する技術が幅広く意図されていると思います。また、平成30年中小企業白書の先進的なIT利活用の章では、AI、IoT、ビッグデータ、RPAなどの言葉がでてきます。※1
  • 低炭素技術には、カーボンニュートラルが意図されていると思います。カーボンニュートラルとは、二酸化炭素(カーボン)の排出削減に取り組んだ上でそれでも排出される分を吸収・除去することで差し引きゼロ(ニュートラル)にする考え方です。日本政府は「2050年カーボンニュートラル」を目指しています※2 ※3。補助事業そのものに低炭素技術が活用されていなくても、原材料の調達などでカーボンニュートラルに貢献する場合は必ず記述します。
  • 経済社会にとって特に重要な技術に意味合いが近いと思われるのが、経済産業省が取りまとめた「産業技術ビジョン2020」です※4。中長期的な産業技術の方向性を示したもので、経済産業省が重要な技術として認識しているものがまとめられています。

※1 中小企業白書(平成30年)先進的なITの利活用
※2 「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?(資源エネルギー庁)
※3 2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を策定しました(経済産業省)
※4 2「産業技術ビジョン2020」を取りまとめました(経済産業省)

政策点②

②新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。事業再構築補助金 公募要領(第3回)1.1版

審査項目の解釈・ポイント
  • どの程度がV字回復といえるかに明確な基準は決まっていないと思われます。審査員からみて「新型コロナウイルス感染症の影響は大きいが、この事業計画で投資をするなら業績は回復しそうだ」と納得感があることが評価ポイントになるでしょう。
  • また、この項目は他の審査項目と問われていることが重複しています。事業環境に与える影響は再構築点②、V時回復を達成するための有効な投資内容は事業化点②~④とほぼ同義と思われます。再構築点②と事業化点②~④に対応した内容を適切に記述することが、本審査項目の評価にもつながると考えられます。

政策点③

③ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。事業再構築補助金 公募要領(第3回)1.1版

審査項目の解釈・ポイント
  • この審査項目は、経済産業省が実施している「新グローバルニッチトップ企業100選」という制度の応募要領によく似た表現がでてきます※1 ※2。新グローバルニッチトップ企業100選の審査基準の収益性・戦略性・競争優位性・国際性の観点から記述できることがないか検討してみましょう。
  • 留意したいのが、審査項目に「潜在性」という言葉があることです。将来の可能性であっても評価対象になる可能性があります。「当社はグローバル市場とは関係がない」と思いこまず、事業内容に関連性があれば事業計画に示してください。

※1 2020年版グローバルニッチトップ企業100選 応募要領
※2 2020年版グローバルニッチトップ企業100選

政策点④

④地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、雇用の創出や地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。事業再構築補助金 公募要領(第5回)1.1版

審査項目の解釈・ポイント
  • どの範囲が「地域」といえるのか明確な基準はないと思われます。事業内容によって都道府県レベル・市区町村レベル・半径500mの商圏のいずれも「地域」になり得ます。
  • 地域の特性に明確な定義はありません。地域の特性を把握する方法の一つに、小規模事業者支援法に基づいて商工会議所・商工会が作成している経営発達支援計画※1があります。管轄地域の産業特性や課題もまとめられているレポートです。補助事業の取組み内容と地域の特性との関連を見出すのに役立つかもしれません。
  • 地域の事業者等に対する経済的波及効果は、補助事業で取り組む上で地域の企業に発注するなど広く想定されていると考えられます。
  • 第5回公募より「大規模災害からの復興等を含む」という記述が追加されました。大規模災害の定義は明示されていません。例えば、激甚災害の指定※2を受けた被災地の復興に関係がある事業は加点される可能性があるでしょう。
  • 「雇用の創出」は自社の雇用だけではなく、補助事業を通じて取引先の雇用が増えるような場合も評価される可能性が高いです。該当する場合は記述します。
  • 「地域の経済成長を牽引する事業となることを期待できるか」については、その前段階の「地域の特性を活かした付加価値創出」「地域事業者への経済的波及効果」があれば自ずと期待できそうです。「牽引」という言葉に明確な基準はないと思われるため、「牽引というほどでは…」と謙虚になり過ぎずに事業再構築が地域経済に与える影響を記述します。
  • 留意したいのが「期待」という言葉です。補助事業によって直ちに雇用の創出や地域の経済成長の牽引する事業とならなくても、将来は期待できそうか?という観点からも検討します。
  • この審査項目に関連する制度には、経済産業省の地域未来牽引企業※3があります。審査要項の審査の視点などは参考になるかもしれません。

※1 最寄りの商工会議所・商工会名+経営発達支援計画でGoogleで検索すると見つかりやすいです。(例:浜松商工会議所作成の経営発達支援計画
※2 過去5年の激甚災害の指定状況一覧(内閣府)
※3 地域未来牽引企業

政策点⑤

⑤異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。 事業再構築補助金 公募要領(第3回)1.1版

審査項目の解釈・ポイント
  • 国は新連携という制度※1や産学官連携の推進などで、以前から複数の事業者等が連携して課題の実現に取組む方向を支援してきました。本項目もその流れの一つだと考えられます。
  • 「共通のプラットフォーム」は、浜松市のFoodelixがイメージに近そうです。Foodelixでは、注文受付プラットフォームを作る企業、地域の飲食店、地域のタクシー会社という複数の事業者が連携して、「(コロナ渦でも)安心して地元飲食店の料理を自宅で楽しめるようになること」という課題の達成に取り組んでいます。※2
  • 「異なる強みを持つ複数の企業等が共同体を構成して」は、「はばたく中小企業・小規模事業者300社 2018」に選定されている事例※3がイメージに近いと思います。この事例では、10社の中小企業が連携して航空機部品を一貫生産することで生産性を高めています。
  • 「経済波及効果」とは、新たに需要が発生すると、その需要を満たすために新たな生産が誘発されることです。産業関連表などを使って説明することもできますが、事業再構築補助金の審査上は要求されていないでしょう。

※1 最寄りの商工会議所・商工会名+経営発達支援計画でGoogleで検索すると見つかりやすいです。(例:浜松商工会議所作成の経営発達支援計画
※2 Foodelixは、飲食店支援を目的としてスタートしたサービスで浜松市の補助を受けている事業です。
※3 加藤製作所 中小企業等10社による、IoTを活用した航空機部品一貫生産(松阪クラスター)を通じた生産性向上

他の審査項目・加点項目

他の審査項目と加点項目については下記のページからご覧になれます。