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【チェックリストあり】事業再構築指針の類型・要件のわかりやすい解説

事業再構築指針 類型・要件の解説

事業再構築補助金の事業再構築指針について、認定支援機関の中小企業診断士が解説しました。事業再構築指針の概要、公式資料の違い、事業再構築の類型、類型ごとの該当要件を確認できます。ダウンロード可能なチェックリストも配布しています。

事業再構築指針とは?

事業再構築指針とは、

  • 事業再構築補助金における事業再構築の定義
  • 事業再構築の5類型(新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編)の定義・該当要件・非該当例

を示したものです。

事業再構築指針に関連する公式情報の違い

事業再構築指針の公式情報はいくつかの資料に分かれています。それぞれの違い(位置づけ)を解説します。

事業再構築指針
事業再構築指針の本体です。事業再構築の定義、類型ごとの定義・該当要件・非該当例が明記されています。

事業再構築指針の手引き
事業再構築指針を具体例を含めてわかりやすく解説したものです。事業計画書で示す内容が指示されています。

よくあるご質問
類型ごとのよくある質問がまとめられています。事業再構築指針と事業再構築指針の手引きに疑問がなかったとしても、自社が申請する類型については確認してください。

類型ごとの該当要件一覧

事業再構築の類型ごとの該当要件を一覧にしたものです。事業再構築の類型と満たす必要がある要件をざっくり確認できます。

新分野展開 事業転換 業種転換 業態転換
(製造業)
業態転換
(製造業以外)
製品等の新規性要件
市場の新規性要件
製造方法等の新規性要件
商品等の新規性要件または
設備撤去要件
売上高10%要件
売上高構成比要件

「事業再編」は、会社法上の組織再編行為等の事業再編を行った上で、新分野展開・業態展開・事業転換・業種転換のいずれかの要件を満たす必要があります。

類型の解説

新分野展開

新分野展開とは、主たる業種と主たる事業の変更はせず、新製品(商品・サービス)を新市場に投入する取組みのことです。

新分野展開に該当するには、

  1. 製品等の新規性要件
  2. 市場の新規性要件
  3. 売上高10%要件

を満たす必要があります。

新分野展開のイメージ

イタリア料理店A社が、素材にこだわった地中海料理を楽しめるレトルト食品を、健康意識が高い顧客層に販売して、新商品の売上が企業全体の10%以上になることを計画。

○現在の事業構成
大分類 中分類 小分類 細分類 売上高構成比
店内飲食事業 宿泊業,飲食サービス業 76 飲食店 762 専門料理店 7629 その他の専門料理店 92.2%
テイクアウト事業 宿泊業,飲食サービス業 77 持ち帰り・配達飲食サービス業 771 持ち帰り飲食サービス業 7711 持ち帰り飲食サービス業 7.8%
○事業再構築穂の事業構成
大分類 中分類 小分類 細分類 売上高構成比
店内飲食事業 M 宿泊業,飲食サービス業 76 飲食店 762 専門料理店 7629 その他の専門料理店 80.0%
テイクアウト事業 M 宿泊業,飲食サービス業 77 持ち帰り・配達飲食サービス業 771 持ち帰り飲食サービス業 7711 持ち帰り飲食サービス業 7.5%
レトルト通販事業 I 卸売業,小売業 58 飲食料品小売業 589 その他の飲食料品小売業 5895 料理品小売業 12.5%

事業再構築後もA社のもっとも売上構成比が大きいのは店内飲食です。よって、主たる業種(大分類)も主たる事業(中分類・小分類・細分類)も変わっていません。さらに、事業再構築後にはレトルト通販の売上高構成比率が10%を超える計画となっています。

事業転換

事業転換とは、主たる業種(大分類)は変更せず、主たる事業(中分類・小分類・細分類のいずれか)を変更して、新製品(商品・サービス)を新市場に投入する取組みのことです。

事業転換に該当するには、

  1. 製品等の新規性要件
  2. 市場の新規性要件
  3. 売上高構成比要件

を満たす必要があります。

事業転換のイメージ

ファミリーを主要顧客とするそば店B社が、そば店を焼肉店にリニューアルする。グラスフェッド牛を使った焼肉料理を、健康意識・所得が高い肉好きに提供して、焼肉事業の売上が最大になることを計画。

○現在の事業構成
大分類 中分類 小分類 細分類 売上高構成比
店内飲食事業 M 宿泊業,飲食サービス業 76 飲食店 763 そば・うどん店 7633 そば・うどん店 87.5%
出前事業 M 宿泊業,飲食サービス業 77 持ち帰り・配達飲食サービス業 772 配達飲食サービス業 7721 配達飲食サービス業 12.5%
○事業再構築後の事業構成
大分類 中分類 小分類 細分類 売上高構成比
店内飲食事業 M 宿泊業,飲食サービス業 76 飲食店 762 専門料理店 7625 焼肉店 100.0%

事業再構築後のB社は焼肉店としての売上が100%になります。よって、主たる業種(大分類)は変わらず、主たる事業(中分類・小分類・細分類)のうち小分類・細分類が変更になります。

業種転換

業種転換とは、主たる業種(大分類)を変更して、新製品(商品・サービス)を新市場に投入する取組みのことです。

業種転換に該当するには、

  1. 製品等の新規性要件
  2. 市場の新規性要件
  3. 売上高構成比要件

を満たす必要があります。

業種転換のイメージ

デザイン会社のC社が、森林のなかに建てる全6棟の高級ヴィラを建設し、森の中でゆっくり過ごしたい大人に提供して、新たな業種の売上が最大(50%超)になることを計画。

○現在の事業構成
大分類 中分類 小分類 細分類 売上高構成比
デザイン事業 L 学術研究,専門・技術サービス業 72 専門サービス業(他に分類されないもの) 726 デザイン業 7266 デザイン業 100.0%
○事業再構築後の事業構成
大分類 中分類 小分類 細分類 売上高構成比
デザイン事業 L 学術研究,専門・技術サービス業 72 専門サービス業(他に分類されないもの) 726 デザイン業 7266 デザイン業 46.5%
ホテル事業 M 宿泊業,飲食サービス業 75 宿泊業 751 宿泊業,飲食サービス業 7511 宿泊業,飲食サービス業 53.5%

事業再構築後のC社は、ホテル事業の売上がデザイン事業を上回ります。よって、主たる業種(大分類)が変更になります。

業態転換

業態転換とは、製品(商品・サービス)の製造(提供)方法を大きく変更する取組みのことです。主たる(大分類)や主たる事業(中分類・小分類・細分類)の変更は任意です。

業種転換に該当するための要件や製造業と製造業以外で異なります。

製造業は、

  1. 製造方法等の新規性要件
  2. 製品等の新規性要件
  3. 売上高構成比要件

を満たす必要があります。

製造業以外は、

  1. 製造方法等の新規性要件
  2. 商品等の新規性要件または設備撤去要件
  3. 売上高構成比要件

を満たす必要があります。

業態転換のイメージ

葬儀業のD社が、葬祭場を縮小しデジタル機器を導入、バーチャル葬儀のサービスを新たに開始する。バーチャル葬儀の売上が総売上の10%以上になることを計画。

○現在の事業構成
大分類 中分類 小分類 細分類 売上高構成比
葬儀事業 N 生活関連サービス業,娯楽業 79 その他の生活関連サービス業 796 冠婚葬祭業 7961 葬儀業 100.0%
○事業再構築後の事業構成
大分類 中分類 小分類 細分類 売上高構成比
葬儀事業 N 生活関連サービス業,娯楽業 79 その他の生活関連サービス業 796 冠婚葬祭業 7961 葬儀業 100.0%

例の場合は、既存の葬儀サービスとバーチャル葬儀では、業種・事業に変化はないため日本標準産業分類は変わりません。業態転換の結果、主たる業種や主たる事業が変更になることに制限はありません。

事業再編

事業再編とは、会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに上記の新分野展開・事業転換・業種転換・業態展開のいずれかに取り組むことです。

事業再編に該当するためには、組織再編行為が必須となる他は、新分野展開・事業転換・業種転換・業態展開のいずれかと同様です。

該当要件の解説

事業再構築の類型の該当要件を

製品等の新規性要件

関係する類型:新分野展開 / 業態転換(製造方法の変更) / 事業転換 / 業種転換

製品等の新規性要件とは、事業再構築補助金に申請する事業者にとって、事業再構築補助金を活用しようとする製品または提供する商品・サービスに新規性があることです。次の1~7に当てはまる場合に要件を満たすと考えられます。

  1. 既存製品等の製造量を増大させる取組みではないこと。
    • 単に既存製品等を増やす取組みは要件を満たしません。
  2. 過去に製造していた製品等を再製造等する取組みではないこと。
    • 過去とは「コロナ前(2020年3月まで)」です。2020年4月以降に新たに製造等を開始したものなら新規性があるとみなされます。※1
    • 試作のみ・販売実績がない等で継続的な売上に至っていない場合、改善を加えること等で要件を満た可能性があります。※2
  3. 事業者の事業実態に照らして容易に製造等が可能な新製品等を製造等する取組みではないこと。
    • 「容易さ」に一律の基準はありません。
    • 例えば、自動車部品を製造している事業者が、新たに製造が容易なロボット用部品を製造する場合は要件を満たしません。
  4. 既存製品等に容易な改変を加えた新製品等を製造等する取組みではないこと。
    • 「容易な改変」に一律の基準はありません。
    • 例えば、自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合は要件を満たしません。
  5. 既存の製品等を単に組み合わせて新製品等を製造等する取組みではないこと。
    • 「単なる組み合わせ」に一律の基準はありません。
    • 例えば、自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合は要件を満たしません。
  6. 既存の製品等の製造等に必要な主な設備等(設備、装置、データを含むプログラム、施設)が、新たな製品等の製造等に必要な主な設備等と変わらない取組みではないこと。
    • 新たな設備等を導入せずに、既存製品の生産に使っていた設備や施設をそのまま活用することはできません。必ず製造等に関連する設備投資が必要です。
    • 既存設備の一部を使うことは認められています。※3
    • 一定の条件のもと、新たに導入した設備を既存製品の製造に活用することは認められています。※4
  7. 製品等の性能が定量的に計測できる場合、既存の製品等と新製品等との間で性能が有意に異なること。
    • 新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量等が、○○%向上する等です。計測方法に一律の基準はありません。
    • 例えば、従来から製造していた半導体と性能に差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合は要件を満たしません。
    • 飲食店の新商品など、定量的に計測が困難な場合は、要件を満たす必要はないと考えられます。

※1 事業再構築指針の手引き5ページ(2021年7月31日参照)
※2 よくあるご質問【新分野展開、事業転換、業種転換】No.5(2021年7月31日参照)
※3 よくあるご質問【新分野展開、事業転換、業種転換】No.8(2021年7月31日参照)
※4 よくあるご質問【新分野展開、事業転換、業種転換】No.9(2021年7月31日参照)

市場の新規性要件

関係する類型:新分野展開 / 事業転換 / 業種転換

市場の新規性要件とは、事業再構築補助金に申請する事業者にとって、事業再構築補助金を活用しようとする事業により製造する製品または提供する商品・サービスの属する市場に新規性があることです。次の1~2に当てはまる場合に市場の新規性要件を満たすと考えられます。

  1. 既存製品等と新規製品等の対象とする市場が同一ではないこと。具体的には、既存の製品等の需要が、新製品等の需要で代替されないこと。
    • 「代替」に一律の基準はありません。新製品等を販売することで、既存製品等の売上が大きく減少することが見込まれる場合は要件を満たさないと判断される可能性が高いです。
  2. 既存製品(商品・サービス)の市場の一部のみを対象とするものではないこと。
    • 例えば、アイスクリーム店がバニラアイスクリームに特化して既存顧客に販売する場合は要件を満たしません。バニラアイスクリームを、①業務用として食品卸や飲食店に販売、②ギフト需要をねらってインターネット通販で販売のように新たな市場(顧客)を想定する計画は要件を満たすと考えられます。

製造方法等の新規性要件

関係する類型:業態転換(製造業) / 業態転換(製造業以外)

製造方法等の新規性要件とは、事業再構築補助金に申請する事業者にとって、事業再構築補助金を活用しようとする新たな製品の製造方法または新たな商品・サービスの提供方法に新規性があることです。次の1~7に当てはまる場合に製造方法等の新規性要件を満たすと考えられます。

  1. 過去に同じ方法で製品等を製造等していた実績がないこと。
    • 既存製品等とは異なる、新しい製造方法等を導入する必要があります。
    • サービス業の場合は、自社にとって新しいサービスの提供方法を導入することで要件を満たすこ考えられます。
    • 外部委託していたものを内製化する場合も要件を満たします。※5
  2. 新たな製品等の製造方法等に用いる主要な設備を変更すること。
    • 新たな製造方法等を導入するときに、主要な設備を変更する必要があります。これまでと同じ設備を使って、製造方法等だけ変更しても要件を満たしません。
    • 例えば、ヨガ教室がオンライン配信サービスをはじめるための配信設備を導入するような場合に要件を満たすと考えられます。ただし、配信に利用する場合でも汎用的に使えるタブレットやスマートフォン等は補助対象経費の対象外です。
  3. 定量的に性能又は効能が異なること
    • 製品等の性能や効能や定量的に計測できる場合、既存の製造方法との違いを示す必要があります。
    • 新しい製造方法等が、生産性の向上に寄与していない場合は要件を満たさないと判断される可能性があります。
  4. 既存の製造方法等により単に製造量等を増大させる場合でないこと。
    • 製造方法等が新しくても、既存製品等の製造量を増やすだけでは要件を満たしません。
  5. 事業実態に照らして容易に行うことが可能な製品等の製造方法等で、製品等を製造等する場合ではないこと。
    • 「容易さ」に一律の基準はありません。
    • 審査員は自社の業界について何も知らない前提で「容易ではないこと」を事業計画に示すことが無難と考えられます。
  6. 既存の製造方法等に容易な改変を加えた方法で、製品等を製造等する場合ではないこと。
    • 「容易な改変」に一律の基準はありません。
    • 審査員は自社の業界について何も知らない前提で「容易な改変ではないこと」を事業計画に示すことが無難と考えられます。
  7. 既存の製造方法等を単に組み合わせた方法で、製品を製造等する場合ではないこと。
    • 「単に組み合わせた」に一律の基準はありません。
    • 例えば、喫茶店が①実店舗でのコーヒーチケットの販売と②オンラインショップでのコーヒー豆の販売を組み合わせて、オンラインショップでもコーヒーチケットを販売するといった場合は要件を満たさない可能性が高いです。

※5 よくあるご質問【業態転換、事業再編】No.5 2021年7月31日参照

商品等の新規性要件または設備撤去要件

関係する類型:業態転換(製造業以外)

商品等の新規性要件は、製品等の新規性要件と同義です。よって、製品等の新規性要件の1~7に当てはまると要件を満たすと考えられます。設備撤去要件は、新商品・新サービスの提供にあたり既存設備や既存店舗の縮小を行うことです。

売上高10%要件

関係する類型:新分野展開 / 業態転換

売上高10%要件とは、3~5年間の事業計画期間終了後、新分野展開では新製品等・業態転換では新たな製造方法等による売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定することです。なお、10%は最低ラインです。数値が大きい計画ほど評価が高まる可能性があります。※6


※6 事業再構築指針の手引4ページ 2021年7月31日参照

売上高構成比要件

関係する類型:事業転換 / 業種転換

売上高構成比要件とは、事業計画期間終了後、新製品等の属する業種(業種転換の場合)または事業(事業転換の場合)が、売上高構成比の最も高い業種または事業となる計画を策定することです。

チェックリストのダウンロード

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