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【審査の観点を解説】持続化補助金 低感染リスク型ビジネス枠

低感染リスク型ビジネス枠 審査の観点解説

小規模事業者持続化補助金低感染リスク型ビジネス枠の「審査の観点」の項目を解説しました。公募要領を読んで解釈に迷っている事業者さまの参考になれば幸いです。

①要件審査

次の要件を全て満たすものであるか審査を行います。要件を満たさない場合には失格とし、その後の審査を行いません。
ア)「2.補助対象者」の要件に合致すること
イ)必要な提出資料がすべて提出されていること
ウ)提出した内容に不備・記載漏れがないこと公募要領 14版

要件審査は、ア・イ・ウの要件を満たしているかの確認です。要件審査を満たさないとせっかく作った経営計画や補助事業計画書が読まれることさえありません。もちろん採択されることもありません。

補助金事務局のウェブサイトで「申請書類の不備7選」が公開されています。このようなコンテンツが用意されていることから、相当に要件審査を満たさない応募が多いことが伺えます。正しく書類を準備するところから競争ははじまっていると考えてください。

事業再構築補助金という補助金では、応募件数の9.14%(第3回公募分)が不備等があったと公表されています。持続化補助金では不備等の割合は公表されていませんが、事業再構築補助金と同等またはそれ以上の可能性が高いと思います。

②書面審査

書面審査では、経営計画と補助事業計画が次のア~オについて審査されます。

ア)補助事業を遂行するために必要な能力を有すること公募要領 14版

「補助事業を遂行するために必要な能力」とは、補助事業計画を遂行(≒計画通りにやり遂げる)できる経営資源という意味でしょう。ここでの経営資源には、ヒト・モノ・カネ・ノウハウなどが広く含まれると考えられます。

例えば、「金型を製造していた従業員数名の製造業が、キッチンカーを導入してうな丼のテイクアウト販売をはじめる」といった計画のように現在の事業とかけ離れた計画であるほど、自社がその事業を実現可能である理由を具体的に説明する必要があるでしょう。

イ)小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取組であること公募要領 14版

前半の「主体的に活動」とは、他社に依存する部分が大半を占めるような事業ではないという意味だと考えられます。例えば、新製品の開発を他社に丸投げするような計画は評価されにくいでしょう。

後半の「その技術やノウハウ等を基にした取組」は、自社の強みを活かした事業といえるか?を指していると考えられます。補助事業の内容が、自社に技術やノウハウ等の強みを活かした計画だと評価されやすいでしょう。

ウ)新型コロナウイルス感染症が事業環境に与える影響を乗り越えるため新たなビジネスやサービス・生産プロセス導入を行っていること公募要領 14版

この項目は、「新型コロナウイルス感染症が事業環境に与えた影響」が定量的に評価でき、「新たなビジネスやサービス・生産プロセス導入」がその影響を乗り越えるため手段になっていることが評価ポイントだと考えられます。

「新型コロナウイルス感染症が事業環境に与える影響」は、単純に「新型コロナで売上が減っている」と書くのはおすすめできません。例えば、「新型コロナウイルス感染症流行前の2019年10月と比較して、2021年10月の売上は35.3%減少した。理由は、感染拡大防止のための外出自粛だと考えられる。例えば、V-RESASのデータによると当店最寄り駅の人流は同期間で15.5%減少してる。」など具体的に示せるとよいでしょう。

エ)新型コロナウイルス感染症に対して「新たなビジネスやサービス・生産プロセス導入が対人接触機会の減少に資する取組」となっていること(※単純な事業継続をするための販路開拓に関する取組は補助対象となりません)公募要領 14版

そもそも小規模事業者持続化補助金の低感染リスク型ビジネス枠は、「新型コロナウイルス感染症感染防止と事業継続を両立させるための対人接触機会の減少に資する前向きな投資を行い、ポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入等の取組を支援する」制度です。

よって、補助事業が「対人接触機会の減少に資する」ことが補助事業計画書で説明されていないと評価されにくいでしょう。ウ)の審査項目と一体的に考えた方がわかりやすいかもしれません。

  1. 新型コロナウイルス感染症の影響
  2. その影響を乗り越えるための補助事業
  3. その補助事業が対人接触機会の減少になること

がつながっていることがポイントです。

オ)自社の経営状況に関する分析の妥当性、経営方針・目標と今後のプランの適切性、補助事業計画の有効性、積算の適切性を有する事業計画になっていること(積算について、数量が一式等で補助対象経費が明確でないものは評価ができません。採択、交付決定された補助金額について、実績報告時に補助金の確定金額が交付決定金額を下回ることがあります)。公募要領 14版

この項目は次の4つが問われています。それぞれに対して経営計画・補助事業計画で示す必要があります。

  1. 自社の経営状況に関する分析の妥当性
  2. 経営方針・目標と今後のプランの適切性
  3. 補助事業計画の有効性
  4. 積算の適切性

「自社の経営状況に関する分析の妥当性」は、分析の客観性が問われていると考えられます。本補助金では、自社の強み・弱み・機会・脅威という視点から検討すると客観的に分析しやすいです。このような考え方をSWOT分析といいます。SWOT分析は、補助金の審査員も見慣れているフレームワークであるため伝わりやすい利点もあります。なお、「1.自社の事業概要」に表で示すとページのスペースも節約しやすいです。

「経営方針・目標と今後のプランの適切性」は、経営方針・目標と補助事業の内容(≒今後プラン)に整合性があるか?が問われていると考えられます。経営方針・目標と補助事業の内容が乖離していると適切性が低いと評価されるかもしれません。なお、「経営方針・目標」という言葉には明確な定義はありません。本補助金では、経営目標が大きな目指す方向、経営目標は経営方針を実現するたえの具体的な目標というニュアンスで検討するとよいでしょう。

「補助事業計画の有効性」は、補助事業計画に記入する内容が総合的に評価対象になると考えられます。「有効性」とは、本補助金の「新型コロナウイルス感染症感染防止と事業継続を両立させるための対人接触機会の減少に資する前向きな投資を行い、ポストコロナを踏まえた新たなビジネスやサービス、生産プロセスの導入等の取組を支援する」という目的からみて有効といえるか?という解釈ができるでしょう。平たくいえば、審査員に「この補助事業なら対人接触は減らせるし、しかも売上は増えそうだ」と納得してもらえるかが評価を決めるでしょう。

「積算の適切性」は補助対象経費の妥当性のことを指していると考えられます。本項目は、経営計画・補助事業計画に加えて、電子申請で入力する「5.経費内容」の項目も審査対象になっている可能性も否定できません。経費内容には、経費内訳(単価・個数)や具体的内容・必要理由を入力する項目があります。特に具体的内容・必要理由が具体的だと評価が高まるかもしれません。

③加点項目

加点項目とは、所定の要件を満たすことで加点される項目のことです。加点項目の要件に該当して応募申請時に申請すれば、審査のスタート時点から点数が上乗せされることになり採択されやすくなります。

ア)緊急事態措置による影響公募要領 14版

2021年以降の緊急事態措置(≒緊急事態宣言の発令)に伴う飲食店の休業・時短営業又は不要不急の外出・移動の自粛による影響で、2019年または2020年の同月と比較して売上が30%以上減少している場合は加点されます。対象となる緊急事態措置については公募要領を確認してください。

この加点を受けるには申請時に、【様式3】月間事業収入減少証明(緊急事態措置影響)の提出が必要です。

イ)多店舗展開公募要領 14版

複数の店舗・事業所を有しており、かつ、各店舗・事業所において、継続的に事業(営業)を行っている場合には加点されます。多店舗展開している、事業所名(店舗名、支店名)、住所・電話番号・本社以外に事業所を有していることが分かるWebサイトのURLを申告します。事務局より確認の連絡が入ることがあります。

④賃金引上げプラン

賃金引上げプランは、補助事業完了から1年後に一定の賃上げをすることを条件に「政策的観点から優先的に採択」するものです。第5回の応募受付分から創設されたものです。

実質的に賃上げを条件にした加点と考えられますが、加点項目から独立したことを踏まえると、他の加点項目以上に重要視されると思います。賃上げ以外の事項は通常プランと同一です。

※賃金引上げプランが創設された背景には、現政権が賃上げに積極的なことがあると考えられます。

賃上げ引上げプランはa~dの4つから選択できます。

  • a.給与支給総額増加①(給与支給総額を1年で1.5%以上増加)
  • b.給与支給総額増加②(給与支給総額を1年で3.0%以上増加)
  • c.事業場内最低賃金引上げ③(事業場内最低賃金+30円以上増加)
  • d.事業場内最低賃金引上げ④(事業場内最低賃金+60円以上増加)

公募要領には、給与支給総額増加と事業所内最低賃金引上げには差異(採択のされやすさ)に違いはないことが明記されています。また、aよりもb、cよりもdを優先的に採択されることも明記されています。

なお、賃上げ引上げプランでは次の場合は補助金の全額返還が求められます。

  • 補助事業終了から1年後に、「事業効果および賃金引上げ等状況報告」及び賃金引上げに係る賃金台帳等の証拠書類の提出がない場合
  • 補助事業終了から1年後に、給与支給総額の増加が実施できていない場合、または事業場内最低賃金の引上げが実施できていない場合

採択率の上げるために安易に賃上げプランを選択するのは避けるべきです。賃上げプランを選択するときは、賃上げ後の人件費負担を許容できるのか?綿密なシミュレーションをしてください。