静岡市の中小企業等デジタル活用事業臨時補助金について解説しました。申請書類のうち、交付申請書と事業計画書の記入例もご覧になれます。
目次
概要
静岡市の中小企業等デジタル活用事業臨時補助金は、新型コロナウイルス感染症によって生じた経営課題を、デジタル活用によって解決を図る取り組みを支援する制度です。ITツールの導入やパソコン・タブレット等のハードウェア(※)が対象になります。
名称 | 中小企業等デジタル活用事業臨時補助金 |
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補助上限額 | 50万円 |
補助率 | 3分の2 |
主な対象要件 | 新型コロナウイルス感染症の影響による経営課題が生じていること。※売上減少率等の定量的な要件はありません。 |
補助事業期間 | 2021年12月1日~2022年2月4日 |
申請受付期間 | 2021年10月15日~2021年11月19日 |
公式情報へのリンク | https://www.city.shizuoka.lg.jp/000_004012_00011.html |
- 採択率はどのくらいですか?
- 本制度は過去に2回実施されています。1回は応募件数163件・採択件数73件で採択率は44.8%でした。2回目は応募件数89件・採択件数74件で採択率は83.1%でした。今回も70件前後が採択されると思います。よって、採択率はどのくらい応募があるかによって大きく変動すると見込まれます。※予算が決まっているので、応募が多くても採択件数が増えることはありません。
- 他の補助金の申請も検討しています。併用はできますか?
- 補助対象経費が異なればできます。重複して補助を受けることはできません。
- 意見書を書いてもらうITなんでも相談窓口は商工会議所の会員でなくても利用できますか?
- 利用できます。事前に予約をしてください。参考:ITなんでも相談窓口(静岡商工会議所)
- ITツールを選定するのに参考になるウェブサイトはありますか?
- 国(中小機構)の運営するここからアプリが役立つかもしれません。このサイトでも解説記事を書いています。参考:【中小機構】ITサービスを探せる「ここからアプリ」の解説
ポイント
中小企業等デジタル活用事業臨時補助金ならではのポイントを解説します。
パソコンやタブレットも補助対象になり得る
補助金は汎用的に使用できるパソコンやタブレット等は補助対象にならないことがほとんどです。しかし、中小企業等デジタル活用事業臨時補助金は、ソフトウェア導入に必要となる場合はハードウェア(≒パソコンやタブレット)の購入も補助対象になります。例えば、キャッシュレス決済サービスに必要なタブレット等は対象になると考えられます。ただし、パソコン・タブレットの性能は必要最低限にすることが求められています。キャッシュレス決済導入のために、iPad proを申請しても認められないでしょう。
年間契約分も補助対象になり得る
補助金は、補助対象期間内の分だけが補助対象経費として認められることがほとんどです。しかし、中小企業等デジタル活用事業臨時補助金は、ITツール等を年間契約をした場合は1年分の経費を申請できます。中小企業等デジタル活用事業臨時補助金の補助対象期間は2021年12月1日~2022年2月4日ですが、年間契約で2月5日以降に利用する分も対象になるという意味です。
売上減少要件がない
中小企業等デジタル活用事業臨時補助金には売上が〇〇%減少している事業者だけが対象という制約はありません。新型コロナウイルス感染症による事業への影響に対して、デジタル活用によって対応ができると考えるならコロナ渦において売上が増加している事業者も申請できます。
記入例
中小企業等デジタル活用事業臨時補助金で作成に苦労する方が多い「交付申請書(様式第1号)」と「事業計画書(様式第2号)」の記入例を掲載します。記入例は、静岡市内の真空低温調理をした鶏料理がウリの飲食店(架空のお店)がECサイト構築とキャッシュレス決済サービス導入の内容で申請するという設定です。
交付申請書
1.事業名
真空低温調理をした冷凍鶏肉料理通販とキャッシュレス決済導入事業
2.交付申請額
500,000円
3.事業の概要
(1)新型コロナウイルス感染症の影響による申請者の事業活動の課題
新型コロナウイルス感染症の影響で次の2つの課題が生じています。
- 【課題1】感染拡大に伴う外出自粛や時短営業等の要請に伴い客数が減少しており、店舗以外で売上を確保する手段を構築する必要があること。
- 【課題2】現状ではストアスキャン方式のキャッシュレス決済(PayPay)を導入しているが、感染拡大でキャッシュレス決済を希望する顧客が増え、クレジットカード等での決済に対応する必要に迫られていること。
(2)デジタル導入による課題解決の方法
課題1に対しては、新たにECサイトを構築してインターネット販売を開始します。ブランド力を高めるためにECサイトのデザインは外部に委託します。また、認知度を高めるために広告を出稿します。課題2に対しては、複数のクレジットカード・電子マネー・QRコード決済での支払いに対応したキャッシュレス決済のシステムを導入します。
事業計画書
1.事業の目的
本事業の目的は次の2点です。
- 【目的1】ECサイトを構築することで、当店の看板メニューである真空低温調理をした鶏肉料理の通信販売に取り組み、店舗以外での売上を確保すること。
- 【目的2】複数の支払い方法に対応するキャッシュレス決済に対応することで、顧客の利便性を高めるとともに帳簿作成の手間の削減や売上分析に活用すること。
2.事業の具体的な実施内容
- ECサイトには初期費用や毎月の固定費が不要で、売上に応じた手数料のみが発生するシステムを利用する予定です。これにより投資リスクを抑制しつつ、インターネット通販をスタートできます。
- ECサイトのデザインは外部のデザイナーに委託し、商品の魅力や当店のこだわりが伝わるように工夫します。
- ECサイトの開設当初は、認知度を高めるためにインターネット広告を出稿します。また、店舗の既存のお客様への案内や外部ポータルサイトでの告知も行い訪問者数を増やします。
- ECサイトの問い合わせ対応や受発注対応は当面は店舗内で実施します。受注状況によっては新たなアルバイト等の雇用を検討します。
- 複数のクレジットカード・電子マネー・QRコード決済に対応したキャッシュレス決済サービスを導入します。そのためにタブレット端末とレジ周辺機器を購入します。
- キャッシュレス決済サービスと連携して利用できるPOSレジアプリ(無料)を導入することで、注文管理や売上分析等をデジタル化します。
- 順次店舗スタッフへの使い方の研修を実施し円滑に導入できるようにします。
- キャッシュレス決済サービスの導入後は店舗のウェブサイトや外部ポータルサイトの情報の支払い方法の情報を更新してお客様に告知します。
3.事業実施の体制
当社は小規模事業者であるため人的資源が限られています。よって、本事業の実施は代表者が主導して取り組みます。
担当者 | 内容 |
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静岡友蔵(代表者) | 本事業全体の統括、外部事業者との契約等。 |
清水あいこ(当店スタッフ) | ECサイトのデザインチェック、他スタッフへのキャッシュレス決済の使い方指導 |
ふじのくにCART合同会社(外部事業者) | ECサイトのシステムを利用する予定の事業者。オンラインビデオ等で設定等の支援を受ける予定。 |
しみずデザイン事務所(外部事業者) | ECサイトのデザインを依頼する予定の事業者。どのようなデザインが望ましいか助言を受ける予定。 |
株式会社しずおかPAY(外部事業者) | キャッシュレス決済の導入予定事業者。担当者よりシステム設定等の支援を受ける予定。 |
4.事業実施スケジュール
項目(何をするのか) | 期間(いつ) | 内容(どのように行うか) |
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ECサイト構築及び、キャッシュレス決済サービスの選定 | 10月20日~10月31日 | ECサイトに利用するサービス及びキャッシュレス決済サービス事業の選定を行い見積を取得します。 |
ECサイト構築に関連する契約・打ち合わせ | 12月1日~1月10日 | ECサイト構築に用いるサービスとの契約及びデザインを担当する外部事業者への発注・打ち合わせをスタートします。デザイナーと、適宜やり取りを行いデザイン面のすり合わせを実施します。 |
キャッシュレス決済サービスの導入 | 12月初旬~12月中旬 | 12月1日以降に契約及び機器の購入を行います。審査等の手続きが完了次第、12月中旬頃に導入が完了する見込みです。 |
ECサイトのオープン | 1月中旬 | ECサイトをオープンする予定です。同時期に広告出稿や既存顧客への告知等も実施します。 |
(ご参考)補助事業期間以降 | 2月~ | 本補助金で取り組むデジタル活用を効果的なものとするためには、ECサイトの販売状況やキャッシュレス決済の利用状況等の継続的な分析が必要だと理解しています。よって、補助事業期間終了後も改善に取り組みます。 |
5.目標とする事業成果
2022年5月時点で月あたり220,000円の売上を見込んでいます。注文単価は5,500円、注文件数は20件を想定しています。販売単価については、当店の販売商品は冷凍で長期保存ができること、クール便のため送料が高めになりますが「5,500円以上から送料無料」にする予定のため5,500円近辺に落ち着くと考えています。注文件数については、ECサイトへのアクセス数が月2,000名程度と想定しており、そのうち1%が購入に至ると考えています。
なお、ECサイトで販売する商品は静岡市産の銘柄鶏である「すごく美味なしぞーかとり」を使用しています。本事業が軌道にのったときには購入数を増やせます。よって、当社の売上増加だけなく地域経済にも貢献できると考えています。
2022年5月時点で店舗のお客様のうち40%がなんらかのキャッシュレス決済を利用することを見込んでいます。これにより現金管理の手間を1日あたり15分程度削減できます。また、希望するキャッシュレス決済が利用できないことを理由とした顧客の離反を防止できます。
なお、連動したPOSレジアプリで注文内容の分析が容易になることから、メニューなどの表記や店内ポップの工夫による売上増を図ります。これにより、キャッシュレス決済による手数料の減益分を補います。