中小企業・個人事業主が対象となる国や自治体の補助金について、メリットとデメリットを認定支援機関・中小企業診断士が解説しました。
目次
メリット
1.新しいチャレンジの費用負担が軽くなる
簡単にいえば、補助金とは「国や自治体の政策に沿って行う新しいチャレンジにかかる費用の一部が補助される制度」です。
補助金の交付を受けることができれば、設備投資・新製品開発・マーケティング施策などの費用面の負担が大幅に軽くなります。
上図の例では、設備投資300万円の経費のうち200万円は補助金の交付を受けています。適切に活用できれば、金銭的なメリットが大きいことは間違いありません。
ただし、補助金は原則後払い(精算払い)です。採択後されるとすぐに200万円が振り込まれる訳ではありません。先に事業に必要な経費をすべて支払い、補助事業を実施して報告等が完了すると入金されます。補助金を利用するときには、入金時期まで考慮した資金計画が必要です。
2.事業計画書を明文化する機会になる
補助金を申請するときには事業計画書を提出します。事業計画書には、現状・課題・市場環境・補助金で取り組む事業の特徴などをまとめます。
事業計画を作るには、事業のことを客観的に考える必要があります。さらに、明文化する過程で考えが整理できます。これは事業計画書を作成する大きなメリットです。
しかし、日々の仕事に追われるなかで、このような時間を捻出するのはなかなか難しいもの。補助金は申請期限が決まっているので、否が応でも作らないといけません。補助金申請に使う事業計画書は、補助金ごとの審査項目を意識する必要があるなど一定の制約はあります。会社の将来にとって価値がある時間になるでしょう。
デメリット
1.事業展開の制約を受ける
補助金にはいろいろな決まりごとがあります。
例えば、補助金の交付決定後でないと設備などの購入・発注ができません(特例がある場合を除く)。補助金の交付決定を待つ分だけ事業展開が遅くなります。一般に、補助金の申請~採択~交付決定までは数ヶ月はかかります。事業環境によっては、タイムラグによる機会損失を考慮する必要があります。さらに、審査結果が不採択で、待ったのに補助金の交付を受けられないというリスクもあります。
他にも、購入した設備は補助事業の以外に使用できない(事前の承認が必要)といった決まりもあります。自己資金の場合と比べて柔軟性が低下します。
2.過大な事業計画になりがち
補助金は補助上限額・補助率が決まっています。例えば、補助上限額が500万円・補助率は3分の2という補助金があるとします。この場合は、750万円投資すると、3分の2の500万円が補助金の額になるというイメージです。
このような制度では、「せっかくなら上限までもらえる計画にしないともったいない」という考えになりがち。上限額に引っ張られて必要以上にお金のかかる計画になっていないか気をつける必要があります。
また、「3分の2は補助金だから」と考えて、一つひとつの投資判断が甘くなることがあります。これは、(よくない)節税対策と似ています。節税になるからと不要な経費を使ってしまい損するイメージです。
補助金の一定割合は自己負担です。必ずまとまった額の自己資金の流出が伴うことを忘れないようにしましょう。
3.事務手続きの負担が大きい
補助金は、公募申請~交付申請~完了報告など、たくさんの事務手続きがあります。そもそも、公募要領を読んで補助金の目的・ルールを理解することが大変です。そこから、事業計画書など申請に必要な書類を用意します。採択されても終わりではありません。提出や長期の保管が求められる書類がたくさんあります。
このように補助金は事務手続きの負担が大きいです。また、負担が大きいということは、その分だけ人件費(または外部専門家への報酬)というコストが発生することを意味します。
まとめ
補助金にはメリットだけではデメリットもあります。無条件におすすめできるものではありません。
- 補助金の目的・制度と自社の事業計画が合致している
- 自社にとってメリットがデメリットを上回る
ときは、事業の発展に役立つでしょう。
補助金は手段の一つに過ぎません。上手に活用してください。